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2020.02.25
こんなにある!ヤマハとカワイ以外の日本のピアノメーカー
ピアノといえば、ヤマハとカワイがまず頭に浮かぶほど、日本ではメジャーなメーカーの双璧です。今では、海外においてもヤマハのピアノは信頼性の高い楽器として幅広く愛されています。
しかし、実際には知名度は低くても質の高いピアノを生産するメーカーが日本にはいくつか存在しています。すでに廃業してしまった会社もありますが、日本におけるピアノ製造の歴史の一端を担うこれらのメーカーについて、今日はご紹介いたしましょう。
ヤマハとカワイ以外の日本のピアノメーカー
アトラス
ヤマハやカワイと同じく、静岡県の浜松市に本拠地のあったアトラス・ピアノ。ヤマハとカワイに次ぐ第3のピアノメーカーと呼ばれたアトラスは、1950年代に創業、1986年に廃業しています。
ピアノ製造の技術では第一人者であった西村武氏が中心となり、国立音楽大学の教授でかつマスターの称号を持つ郡司すみ氏が技術顧問となっていたことでも有名です。それだけに、素人にはわかりにくい本格的な音を出すピアノとして知られていました。
ディアパソン
昭和23年創業の「ディアパソン」のキャッチフレーズは、「国産でもっとも純粋な響きがするピアノ」。
ディアパソンは、日本のピアノ製造のレベルを世界へと高めた大橋幡岩氏によって設立されました。不惑を迎えていた大橋氏の熟練と思想が、余すところなく伝えられたメーカーといって過言ではないでしょう。
ヨーロッパの正統を伝えるピアノづくりのテクノロジーが、ディアパソンの最大の特徴といわれています。また、ディアパソンは2018年から、カワイの1ブランドとして販売されています。
ローゼンクランツ
知名度は決して高くないものの、豊潤な音を奏でるピアノとして名高いのがローゼンクランツです。ローゼンクランツのピアノを製造しているのは、国産のIKピアノ。製造元はもともと鍵盤を製造していたことから、同社のピアノも鍵盤にこだわりがあるといわれています。特徴のある美しい音ゆえに、ローゼンクランツの名前が記された偽物も出回るといわれています。
シルバースタイン
1947年に、ピアノとハーモニカの研究開発を目的として設立された東海楽器。同社が作り出すピアノが、シルバースタインです。ピアニカやチェンバロなど多岐にわたる鍵盤楽器を生産している東海楽器は、1978年からアップライトピアノの生産を開始。ドイツのシンメル社のピアノを研究し、小型化に成功しました。家庭で楽しむ場合にも、クリアで美しい音が楽しめるのがシルバースタインの特徴です。
エルンストホーマイヤー
エルンストホーマイヤーを生産するのは、スタインリッヒ製作所です。
同社の母体となっているのは1934年に設立された三葉楽器製作所で、1948年に東洋ピアノ製造株式会社とスタインリッヒ製作所に分かれました。
エルンストホーマイヤーのピアノは、大量生産の時代に逆行するこだわりのある作りが特徴であり、他の追随を許さない名器として名を馳せてきました。1988年頃までしか生産が行われなかったため、希少性の高いピアノとしても有名です。
ゲルス&カルマン
1949年に創業し1986年に廃業した大成ピアノは、超高級なピアノを製造していたことで知られています。ゲルス&カルマンは美しい音色だけではなく、その美観でも人気の高かったピアノです。
大成ピアノには腕利きの職人が揃っていたためか、ゲルス&カルマンは重厚感のある玄人好みの音を出します。大成ピアノが廃業した今も、この音色を愛好する人が絶えません。
大橋ピアノ
日本のピアノ製造技術を語るうえで、筆頭に名が挙がるのが大橋幡岩氏です。その彼が、ピアノの大量生産の時代に反発し、自らの名を冠した会社を設立したのは昭和30代半ばでした。
以後、1995年に廃業するまで生産されたピアノは4639台。大橋幡岩氏と跡を継いだ2代目の巌氏の死によって大橋ピアノは廃業しましたが、現存するピアノは「幻の名器」として珍重されています。昭和の名工と称えられた大橋氏が、その名に恥じぬピアノを作ることを厳しく課してきただけに、晩年の彼の熟練が注ぎ込まれた名器中の名器と呼んで差し支えないでしょう。
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