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2019.08.20
子どもと音楽教育、ピアノを選択した場合の数々のメリット!
幼児期に音楽を習う場合、もっともポピュラーな楽器がピアノです。
ピアノを選択する理由として、両親のいずれかが過去にピアノを習っていたというケースや、最も身近にある楽器であったというのが最も多いかもしれません。
幼少期に音楽に触れる効能は計り知れないといわれています。
そして、ピアノを演奏するという選択をした場合には、さらなるメリットがあることをご存知でしょうか。
音楽は万能薬
音楽は私たちを慰め、鼓舞し、癒してくれる存在です。
老若男女のさかいなく精神上の万能薬ともいわれる音楽は、科学の分野からも医学の分野からも高く評価されてきました。
そして、音楽に触れたり楽器を奏でたりすることは、脳を刺激し、スキルの向上を促進することももはや世間の常識となっています。年齢に関係なく、楽器を演奏することは新たな世界への扉を開く可能性が大きいのです。
それでは、もっともポピュラーな楽器のひとつであるピアノを演奏することについて特化したメリットはあるのでしょうか。
児童や青年期の精神医学誌『Journal of American Academy of Child & Adolescent Psychiatry』などをはじめ、ピアノを習うことから得るメリットはさまざまな研究で実証されてきました。
プロになることを目指すのではなく、日常生活の中で音符を読み、ピアノを弾いて楽しむというレベルでも、ピアノは私たちに多大な良い影響を与えてくれるのです。
ピアノを演奏することはマルチタスキング!
弦楽器と比べると身近にある楽器のせいか、ピアノの演奏は他の楽器と比べると簡単というイメージがあります。
しかし、よく考えてみてください。右利き左利きに関係なく、ピアノの演奏は両手の動きが異なることが基本です。上達するにつれて、さらにペダルを使用するため足まで動かすことになります。こうしたマルチタスキングは、実は実生活の中で実行することがそれほど多くないのです。
ピアノの場合、88の鍵盤の上を左右の手が動きます。このとき、楽譜に書かれている様々な音符を同時に読み、指にその音を指令するわけです。両手に異なる動きを強いるだけではなく、音のテンポ、強弱、正しい姿勢の維持、呼吸の制御など、ピアノを弾く時に意識しなくてはならないことは大変多いことがわかります。そのため、ピアノを弾くことは脳への影響が大、というのが研究者たちの主張するところなのです。
ピアノによる脳への刺激とは?
それでは、具体的にピアノを弾くことによってどんな刺激を脳に与えるのでしょうか。
アメリカの研究によると、ピアノを幼少期に継続的に習得することは、習っていなかった人たちと比べて後年の脳のありかたに大きな相違が認められたそうです。 つまり、通常の人が加齢とともに失ってしまった認知機能を保持し、アルツハイマー病などに対しても発症率が低くなっていたのです。とはいえ、子どもたちに「おじいさんやおばあさんになっても困らないようにピアノを習いましょう」というのは非現実的です。
それでは、ピアノを習得中に同時に進行するメリットはあるのでしょうか。研究者がピアニストの脳をスキャンしたところ、ピアノを弾かない人の脳とはあきらかな違いがありました。右利き左利きによって、脳の中心溝とよばれる溝の深さが決定されます。左右の溝の深さが、利き手によって変わるのです。ところが、ピアニストの脳はこの中心溝の深さが左右ともほぼ同じでした。つまり、利き手ではなくても、利き手と同じようなレベルまで動かすことが可能なのがピアニストの手なのです。
専門家によれば、こうした脳を持つ人は問題解決能力に長け、優れた創造性を所有していることが多いのだそうです。
演奏すること=リスニングを行っている
演奏することは、他者に聞かせるだけではありません。
自分の耳でも、毎回変化のある演奏を聴いていることになります。演奏は、その日の気分や体調によっても当然変わってきます。これは、自分の中でそのたびに新たな要素を発見しているということです。ピアノの上達のために、子どもたちも高いレベルに上がるための努力を理論的に行っているわけです。
これが、創造力の促進につながっていることはもちろんですが、自分自身を客観的に見つめるという大人でもあまりない機会に恵まれることになります。子どもたちにとって、読書の中でも音読が重要なのは、やはり自分の耳で聞くというひとつの行為が理解力を深める一因となるためです。音楽も言語も、こうした共通性があるのですね。
暗譜することによるメリット 数学的思考の発達
ピアノの発表会ともなれば、暗譜をすることが先生から義務づけられます。前述したように、ピアノは両手の異なる動きを暗記しなくてはいけません。研究によれば、難しい曲を暗譜すればするほど、集中力が持続し記憶力が向上するのだそうです。これは言わずもがなのことです。さらに踏み込めば、こうした能力が向上することによって数学的思考を支配する脳の領域が発達することが研究で報告されています。音楽と数学も、やはり密接な関係があるのですね。
経験がなくても即音が出るというシンプリシティ
両親が子どもに音楽の習得を望むときには、さまざまな音楽を子どもに効かせてから決定するのは当然のことです。
無垢な子どもたちは、ときにはバイオリンの繊細な音に魅かれたり、トランペットの勇壮な音に執着したりすることも多々あります。しかし、弦楽器や管楽器はある程度の経験を積まなくては正しい音が出せないというデメリットがあります。音楽をゼロから始める子どもにとって、最初は外国語のような音符、リズムに慣れるのに精いっぱいです。
ピアノならば、音符が読めるようになればその通りに引くだけというシンプルさがなによりのメリット。実際、まずはピアノからお稽古事を開始し、のちに別の楽器へと移行する生徒さんも多いはずです。
マサチューセッツ工科大学の研究が実証したピアノと言語能力の関係
2018年、マサチューセッツ大学と北京大学は、幼少期のピアノの習得と子どもたちの学習能力に関する研究を共同で行っています。対象となったのは、4歳と5歳の75人。75人は、3つのグループに分けられました。
- 週3回、45分のピアノのレッスンを受ける
- 読書トレーニングのレッスンを受ける
- どちらのレッスンも受けない
この実験は、6カ月続きました。
実験終了後、研究チームでは言語の識別能力を分析しています。結果は、母音に関しては(1)と(2)のグループが(3)よりも断然秀でていたそうです。しかし、子音に関しては、(1)のグループ、すなわちピアノのレッスンを6か月受講した子どもたちのみ正しく識別し発音できた、という結果になったのです。研究チームでは、ピアノのレッスンを受けたグループの子どもたちは脳波の分析でも様々な音に対して他グループよりも優れた脳の反応を示したことを報告しています。つまり、ピアノを習ったことによって音に対してセンシビリティが発達し、聞き取るときも話すときも、抜きん出た結果になったのです。
ピアノの奏者は孤独?
音楽は、聴くだけではなく演奏することによってよりさまざまな長所を実感できるものです。
しかし、雑多な音楽が身近にあふれている現代では、質の良い音楽を子どもに触れさせる機会はまれになってしまいました。ピアノへの興味を喚起させるためには、演奏会などの機会を見逃さないことも重要です。しかし、ピアノを選択することはデメリットもゼロではありません。ピアノは、それだけでひとつの音楽や楽曲を形成できます。そのため、合奏などの機会が少なく、個人レッスンの場合は子どもたちが飽きてしまう可能性もあるのです。ピアノの奏者は孤独といわれるゆえんですね。
プライベートレッスンであっても、発表会などの機会に連弾や合奏のチャンスもあります。なにごとも、習い事の最初は億劫なものです。しかし、よい先生と心から好きと思える曲に出会ったとき、子どもたちのピアノも一段上へとレベルアップしていくのです。
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