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2019.03.26
時を越えて今なお愛され続ける女性ピアニスト「クララ・シューマン」の魅力
現代のコンサートでは一般的な「暗譜」や、「作曲家の書いた曲をピアニストが演奏する」というスタイルの定着に大きな影響を及ぼした、歴史上でもトップクラスの知名度を誇るクララ・シューマン。今もなお愛されているピアニストのひとりです。
今回は、女性ピアニストクララ・シューマンが送った激動の人生をご紹介し、その魅力をお伝えします。
多くの人から愛され続けるクララ・シューマンの一生
クララ・シューマンは、19世紀で最も有名な女性ピアニストといっても過言ではありません。そんな彼女の人生を辿っていきましょう。
9歳でプロデビュー!10代で宮廷からも評価される天才少女
当時、作曲家やプロの演奏家の多くを男性が占めていた中、1819年にドイツ(当時のザクセン王国)で生まれたクララ・シューマンは、わずか9歳にしてプロデビューを果たします。
ピアノ教師の父親から「第2のモーツァルトを目指す」という猛烈な指導を受けたクララの演奏技術は非常に高く、作曲家の意図をできるだけ素直に反映する演奏スタイルで、プロデビュー後は各地の宮廷等で演奏を行いました。
どれくらい評価されたのかというと、かの有名な詩人ゲーテや当時のオーストリア皇帝フェルディナンド1世から「天才少女」として扱われていたほど。
クララは女性の外国人としてオーストリアで初めて「王室皇室内楽奏者」という称号も得ています。実力も名声も申し分ない、正真正銘のプロピアニストだったのです。
作曲家・ロベルト・シューマンとの出会い
プロとして数多くの演奏会を行っていたクララは、プロデビューの前後に夫となるロベルト・シューマンと出会います。きっかけは、法律を学んでいたロベルトがクララの父に師事したこと。
最初は年の離れた兄妹のような関係でしたが、お互いに作曲しあったり手紙を交わしたりする内に2人の仲は急接近。しかし、気難しいクララの父とロベルトの相性は悪く、2人の交際は大反対にあいました。さらに、練習中の怪我がもとでロベルトはプロピアニストの道を断念せざるを得ませんでした。
結婚を反対されたクララ・シューマンが取った方法とは
結婚を反対されても2人の愛は止まりません。後の夫ロベルトはクララの住まいの近くで生活し、頻繁に手紙をやりとりします。
手紙のやりとりすら禁じられると、ロベルトはクララを思った曲を作曲。クララも、各地の演奏会でロベルトの書いた曲を演奏しました。
父親と裁判をしてまで勝ち取った家庭と仕事の両立
最終的にクララの父のロベルトへの暴言等がひどくなったこともあり、ロベルトは裁判に訴え出てクララとの結婚を勝ち取ります。このとき、クララは20歳。
結婚後はロベルトとの間に8人もの子宝に恵まれ、子育てや出産の合間を縫って各地に演奏旅行へ行くというハードスケジュールをこなしていたのです。
そのため、クララ・シューマンは女性の社会進出が現代ほど多くなかった時代で、キャリアウーマン的な立ち位置を築いた人物のひとりでもあります。
夫との別れと作曲家としての諦め
天才少女と呼ばれて一流ピアニストに成長し、莫大な収入と愛する夫・子供たちを得たクララですが、もともと打たれ弱いところのあった夫ロベルトは精神を病み、結婚から16年後に亡くなってしまいます。
また、クララは作曲家としても様々な曲を書いていました。
クララの曲はフランツ・リストから絶賛されていましたが、当時の時代背景から女性の作曲家は高く評価されず、夫の死の前後、37歳の時に作曲をやめてしまいます。
子供たちを育てるため、また晩年精神病等になり評判の悪くなった夫の名誉を回復するため、クララはピアニストとピアノ教師に集中するようになったのです。
最終的に、クララは76歳の時に脳出血で亡くなります。その人気の高さは、ヨーロッパの通過がEUのユーロに統一される前、ドイツ固有の通貨だった100マルク札に肖像画が使われるほどでした。
暗譜や作曲家と演奏家の区別を定着させた女性ピアニスト
クララの功績として大きいのは、暗譜を定着させたこと。もともと、ヨーロッパでは楽譜を読みながら演奏するのが一般的でした。
しかし、クララは譜面を事前に暗記し、何も見ずに演奏する現在の演奏会スタイルを好み、定着させています。
また、当時は「作曲家=演奏家」というスタイルが一般的で、まだ他人の曲を演奏する人が増え始めるかどうかという時代。クララは夫の曲を含め積極的に他人の曲を演奏した人としても知られています。
200年経っても色あせないクララ・シューマンの魅力
2019年は、クララの生誕200周年です。才能があり、仕事と家庭を両立し、数多くの後進を育てた女性ピアニスト「クララ・シューマン」は、当時から現代まで色あせることなく評価され続けています。
数は少ないものの、全曲集も発売されているため、この機会にクララ・シューマンの手がけた曲に触れてみましょう。
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