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2019.09.17
ピアノのペダル、使いこなせている?実践してみよう、3つのペダル
幼少期からピアノを習っていました、という方は日本ではとても多いはずです。
クラシック音楽に興味があるご家庭ではなくても、幼児期のお稽古ごとの一つとしてピアノはすでに定着しています。ピアノのレッスンを始めたころには届かなかった足のペダル、ようやく届くころになってレッスンを断念してしまうケースも多いようです。そのため、家庭にピアノがあるにもかかわらず、ペダルの役割がよくわからないというかた、いらっしゃいませんか?今日は、そのペダルについてのお話です。
現代のピアノが完成したのはおよそ100年前
私たちが現在目にするピアノ、その形が定着したのはおよそ100年前といわれています。
オーケストラをバックに、ピアノ協奏曲を演奏しても背後の演奏の音と対等に渡り合えるようになったのが100年前なのです。14世紀の終わりに登場した「チェンバロ」という楽器が、ピアノのご先祖。18世紀に、フィレンツェの名家メディチのお抱え音楽家によって、強弱が自在の鍵盤楽器「ピアノ」が生まれました。実際、イタリアでは今でも「ピアノフォルテ(弱い強い)」の名称が一般的です。18世紀以降、各地で改良や開発がすすめられて、主にドイツ、オーストリア、イタリア、フランス、イギリス、アメリカ、そして日本で、質の良いピアノが生産され続けています。ピアノは鍵盤楽器です。ですから、鍵盤をたたけば音が出るのですが、原理を探ると鍵盤をたたくことによって、ハンマーが金属の弦を打っています。ピアノの内部には、200本余りの弦が張られているのです。ピアノのペダルの役割は、この弦と深いつながりがあります。
2つの形状を持つピアノとペダル
ピアノの形には、2つあります。
スペースに余裕がある場所に置かれ、コンサートにも使用されるグランドピアノ。それから、寸が詰まり高さのあるアップライトピアノです。こちらは、家庭用のピアノとしてよく知られています。いずれも、3つのペダルがついています。
※2本ペダルの機種もあります。
一番右にあるペダル「ダンパーペダル」
まず、ピアノ初心者でも使いやすく、かつ最もよく使用されるのが一番右側にあるペダルです。
グランドピアノでもアップライトピアノでも、一番右のペダルの役割は全く同じ。「ダンパーペダル」と呼ばれるこのペダルを踏むと、音の響きが長く続きます。鍵盤から手を離した後もその響きが続くために、弾いていない音とも共鳴するわけですね。そのため、「ラウドペダル」という別名もあります。
役割を異にする真ん中のペダル
つぎは、真ん中のペダルです。
このペダルは、グランドピアノとアップライトピアノでは役割を異にします。
まず、グランドピアノの真ん中のペダルの呼び名は「ソステヌートペダル」。「ソステヌート」とはイタリア語で、「持続する」の意です。そう、このペダルも音を響かせる役割があるのです。それでは、一番右のダンパーペダルと変わらないと思うでしょう?ところが、さにあらず。ソステヌートピアノは、ペダルを踏んだ瞬間に押していた鍵盤の音のみを響かせるのです。
一方、ダンパーペダルは指を離した鍵盤の音も響かせるという違いがあるのです。このソステヌートペダル、実は音大生でもめったに使わないといわれている実用性の低いペダルなのです。
次は、アップライトピアノの真ん中のペダルはどうでしょうか。
こちらは、「マフラーペダル」という名がついています。役割は非常にわかりやすく、音を小さくするというもの。音が小さくなる理由は、鍵盤から伝えられるハンマーと弦の間にフェルトが挿入されて、音量が下がるためです。ご近所への迷惑を考慮すると、有効なペダルといえます。
※2本ペダルには、搭載されておりません。
音がまろやかになる?一番左側の「シフトペダル」
最後は、一番左側のペダルです。名称は、「シフトペダル」。「移動」を意味する「シフト」、いったいなにが移動するのでしょうか。
グランドピアノを見てみましょう。
移動するのは、なんと弦を打つハンマーなのです。シフトペダルを踏むことによって、鍵盤がスライドし、打たれる弦の数が減るのです。打たれる弦の数が減る、なんて言われても、それでは元から弦は何本あったの?と思われるでしょう。ピアノの鍵盤は、88個。にもかかわらず、弦の数は220~230本もあるのです。低い音は、1つの鍵盤につき弦が2本。
中高音は、1つの鍵盤につき3本の弦が張られています。通常は、ハンマーによってすべての弦が打たれるのですが、シフトペダルによってハンマーがずれて、打たれる弦の数が1本減ります。そのため、イタリア語では「ウナ・コルダ(弦1本)」という名で呼ばれているのです。
一方のアップライトピアノのシフトペダルは、踏み込むことによって打弦する数は変わらないものの、ハンマーの位置が通常よりも弦に近づくために、あたりが柔らかくなります。よって、シフトペダルを使用すると、音がまろやかになるともいわれています。別名を「ソフトペダル」と呼ばれる所以です。実はこのソフトペダルを微妙に使いこなす技こそが、ピアニストには重要であるともいわれているのです。
音色を変化させるペダルはいつごろから登場したのか
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- 音を長く響かせる。
- 音量を下げる。
- 音を柔らかくする。
これらが、ピアノの3つのペダルの持つ役割であることはお判りいただけたでしょうか。実はこれらの機能、かつてのピアノは膝や手で操作していたのだそうです。1783年に、ロンドンのブロードウッド社が足のペダルの特許を獲得。その後、イギリスのピアノ生産者、ウィーンのピアノ生産者の間で瞬く間に普及したそうです。というのも、膝でこれらの操作を行おうとすると上半身の動きが限定されてしまうため、音域まで固定されてしまうというデメリットがあったからなのだそうです。機能を足のペダルに移動したことで、演奏する音楽の可能性が広がったというわけです。
ペダルにさまざまな機能を仕掛けるという作業、19世紀にはひじょうに流行しました。なかには、5つのペダルを持つピアノや先が割れているペダルまでありました。例えば、18世紀に流行した「トルコ行進曲」を演奏するときに、勇壮なイメージを演出するためにシンバルの音が響く効果を持つペダルまであったそうで、これはその名も「トルコ・ストップ」と呼ばれています。
現在は姿を消してしまったいくつかのペダルには、より人々を惹きつける音楽を生み出そうとした職人や音楽家たちのアイデアと熱意が込められていたのですね。
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